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東京地方裁判所 昭和34年(特わ)906号 判決 1960年10月10日

被告人 株式会社船津商店 外一名

主文

被告会社を別表1の事実に付罰金十万円、2の事実に付罰金十万円に、3の事実に付罰金五万円に、4の事実に付罰金二十万円に、5の事実に付罰金五万円に、6の事実に付罰金五万円に、7の事実に付罰金五万円に処する

被告人舟津満を懲役六月に処する

但し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は東京都品川区大井南浜川町一六八四番地に製造場を有し、物品税法第一条掲記第二種丁類三十号該当の課税物品である氷冷蔵器の製造販売業を営むもの、被告人舟津満は同会社の相談役であつて、長男である右会社代表取締役舟津義一に代つてその営業一切を統轄するものであるが、被告人舟津満は被告会社の業務に関し、物品税を逋脱する目的で、別添一覧表の通り昭和三二年一二月から昭和三三年六月迄の間、氷冷蔵器合計四、九五七個を代金合計二七九七万四千百二〇円で前記製造場から移出販売したのに拘らず、架空名義又は非課税品名による納品方法、仮装製造場に未納税で移出する方法等を用いて該取引の一部を秘匿した上昭和三二年一二月移出分については所轄品川税務署長に対する課税標準申告書を提出せず、その余の月分については氷冷蔵器合計二三六八個を課税標準額合計一一、二九二、二〇〇円で移出したに過ぎない旨虚偽の申告書を前同署長に提出し因つて同署長をして順次該申告書通りに税額の調定を為さしめ以て物品税合計二四〇万三八四〇円を逋脱したものである。

(証拠の標目)(略)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は被告人には逋脱の意思はなかつたのであり単に納期を繰延べる意思であつたに過ぎず且つ事後に物品税は全額納めたから逋脱罪は成立しないと主張する。

確に本件の大部分を占める日本冷蔵KKに納めた分については一部を後楽園アイスプラントに未納税移出を仮装した後で小石川税務署に申告しているのでその部分については終局的な逋脱はなかつたことになるけれども、物品税法第三条第四条第八条第十条等の趣旨に依れば同法第十一条の場合以外は製造場より移出した時を基準として納税義務者、課税標準を決定しその申告を為さしめて課税を行わんとしていることが明瞭であるから、納税の時期を後らせる目的で通常の移出があつたのに法第十一条の処置を仮装することは脱法行為であつて逋脱罪を構成することは勿論である。

よつて、弁護人の主張は採用し難い。

(確定判決)

被告人舟津満は昭和三三年二月一七日東京地方裁判所に於て物品税法違反罪に因り罰金十五万円に処せられ右判決は昭和三四年二月二六日控訴棄却同年七月三一日上告棄却に依り同年八月五日確定したことは前科調書の記載に依り明らかである。

(法令の適用)

法律に照すに判示各所為は物品税法第八条第一八条第一項第二号第二二条に該当するところ被告人には前示確定判決があつて本件各所為は被告人については刑法第四五条後段の併合罪の関係にあるので同法第五〇条に依り更に裁判すべく以上は同法第四五条前段の併合罪であるから被告人については懲役刑を選択し同法第四七条第一〇条を適用し犯情最も重い別表4の罪の刑に併合罪加重した刑期範囲内又被告会社については罰金刑を選択し物品税法第二一条に則り夫々主文の通り量刑をし、尚懲役刑については刑法第二五条第一項に則り二年間右刑の執行を猶予すべきものと認める。

よつて主文の通り判決する。

(裁判官 熊谷弘)

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